冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「くっ!? 防御態勢を取れ! 聖女たちに近づけさせるな!」

 素早く判断したレオリンの命令も意味をなさず、前列の兵隊たちが一頭の大蛇の首振りで薙ぎ倒された。そしてもう一頭がそれに続いてセシリーへと首を伸ばして来る。

「――えっ!?」

 セシリーは驚愕していた。黒蛇の動きは見えていたにもかかわらず、目を見開いたままになっていたのは、その頭の上に乗る赤い髪の青年に目を奪われていたからだ。

 大蛇の舌が瞬時に伸び、セシリーの身体を巻き取って連れ去る。予期していたのか、リュアンは空中で剣を抜いてそれを断ち切ろうとしたが……同時に、蛇の頭上から飛び降りた赤髪の青年がそれをさせまいと彼目掛けて剣を振り下ろした。

「ぐうっ、セシリーッ!!」
「リュアン様――!」