「こ、こんなっ……ここまでの魔力とは」
「……不覚でしたわ」
「日中であればしばらく手こずったかも知れませんけれど……大した戦いも経験していないあなたがたではこんなものでしょう。まあ、死にはしませんわ。大人しくそこで見ていて下さいな」

 レオリンやフレアも、おそらくこの国で片手の指の数に入る程優秀な魔法使いだ。多少の罠ならそれごと斬り伏せるつもりだったのだろうが……彼らにもエイラの持つ、ふたりを歯牙にも掛けない魔法の技術と狡猾さは計算外だったはず。一体どこにエイラがこんな部分を隠していたのか、身近にいたセシリーにすら想像もできなかったのだから。

「ぐううっ……セシリー、大丈夫か」

 リュアンがセシリーを庇うように腕を回し、彼女ごとその身を闇で出来た腕で縛られるが……それを無視してでも、セシリーはエイラに問わなければならないことがあった。

「エイラぁっ! どうして……どうしてあなたが!? あなたは、私が小さい頃からずっと姉のように面倒を見てくれて、お父様を支えてくれて……ずっと家族みたいに育って来たじゃない! こんなことする人じゃないって、私が一番わかってる……お願いだから止めてよ!」