「派手に吹っ飛ばせないのが面倒ですわね……! 『光精よ、朝陽を束ねし鏃にて、暗闇を打ち抜かん』」

 レオリンとフレアの手にそれぞれ、光の剣と弓が現われ、エイラを狙う。セシリーはリュアンの腕から抜け出そうと暴れたが、それは叶わず……目の前でレオリンの切っ先がエイラに届こうとする。

 しかし、セシリーは見ていた。彼女から余裕の笑みが消えていないのを。

「若いですわね。飛び出す前に足元をよく見なければ。『闇よ……宵闇の腕よ、背く者を縛り、戒めの苦界へ落とせ』」
  
 詠唱と共にエイラは爪先で地面を強く叩いた。
 
 たった今起動した、部屋の地面を覆い切るほどに大きく描かれた赤色の魔法陣に気づけなかったのは、元々あった稼働中の魔法陣に紛れ込んでいたせいだろう。地面から夥しく現れた黒い手が、光剣がエイラの肩口に吸い込まれるより半瞬早く、レオリンを地面に引きずり倒す。同様に、光弓もその一本を貫いただけに終わり、フレア自身も体を縛りあげられた。