冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「それでは皆様、若きふたりの艶やかな姿で会場を大いに盛り上げていただくとしましょう!」
(頑張ってちょうだいね、セシリー)
(こ、こういうのって本来あなた方の役目じゃないんですかっ!? ちょっと――!)

 軽くこちらの肩を叩き王太子と共に退いたフレアに恨めしい眼差しを送った後、取り残されたセシリーはもう目の前のリュアンと向き合うしかない。後数小節も待たずに、ステップは開始される。

 リュアンが両腕を腰にやると、地面に向かって憂鬱そうに息を吐く。

「まさか、こんなことになるとはな。どうせキースの差し金だろ」
「フレア様の悪ふざけも混ざってるような気がしますけどね。でも私、覚悟を決めました。こうなってしまったら楽しむしかないですよ、ね?」

 それでも、セシリーはリュアンに笑いかけることができた。こんな状況だって、大したことじゃない。少しだけそんな風に思えるようになったのは、彼らと過ごしたこの数か月があったから。傍に皆が……この人がいてくれたから、どんな大変なこともセシリーの糧になっていったのだ。