冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 今もリュアンは周囲から注目を浴びていて、自分事ではないのに落ち着かない気分になりそうなものだが、不思議と平然と立つ彼が隣にいると背筋が伸び、自分まで強くなった気がしてくる。

 浮遊の魔法を使った時と同じような昇降台の感覚に戸惑いながら、セシリーたちは地上三十階の展望広場に送られた。その手前側半分には所狭しと立食用のテーブルが立ち並び、奥側の半分は舞踏に使用するのか、空っぽの空間が広がるだけだ。

 側面のガラス張りの壁からは眼下に王都の町並が広がり、やや青みを残した空に、もう朧げに月が浮かび始めているのが見える。

 まだ立食会場は解放されていないらしく、少し壁側に寄ってリュアンと談笑し、会の始まりを待っていると・……大勢の紳士淑女がリュアンに挨拶に訪れた。

 セシリーができたのは軽い挨拶と、リュアンが合図して話を振ってくれた時に微笑んだり頷いたりするくらいの事だ。