「……気のせいですわ。きっと、光の加減で違って見えたのでしょう」
「うん……」
「そ・れ・よ・り、動かないよう言いましたでしょう!」
「ひゃい!」

 耳を掴まれぴしゃりと叱られたセシリーが慌てて背筋を伸ばし、もう一度エイラの顔を見直すと、今度は特に違和感を感じない。気のせいだったのだろうか……疑問だったがそれよりも、また体勢を崩して怒られては敵わないとセシリーは居住まいを正す。

 そしていい加減疲れてうとうとしそうになってきた時、エイラが肩を叩いて終わりの合図を告げた。

「御嬢様、できましたよ。ご自分で見てみてください……」
「……うわぁ」

 鏡の前に映った顔は別人のようになっていて驚く。くっきりと目鼻立ちが強調されて、特徴のなかったのっぺり顔も今だけはバランスよく整っているように見えるのが不思議で、やはり化粧もれっきとした技術なのだと思い知った。