「御嬢様は肌がお綺麗ですから化粧がよく映えますわね~」
「あ、ありがとう。でも今回は目立つのが目的じゃないから……」
「いいえ、これはクライスベル商会にとっても存在をアピールするチャンスでございますのよ~。しっかりと参列者の皆様に愛想を振りまいてきてもらいませんと。ほら、動かない」

 うへえと、頬が引きつりそうになったのに釘を刺され、セシリーは顔をがっちり固定されたまま白粉やら頬紅やらなんやらを塗りたくられる。

 じっとしているのが苦手なセシリーだが、でもこうした時間が嫌いというわけではない。こうして対面していると、エイラの表情がよく見えるからだ。普段はおっとりとしている彼女だが、こうして真剣に仕事をしている時は、いつも少し眠たげな眼がキリっと開いて、とても綺麗で格好いい。でも……とセシリーはふとした違和感に首を傾ける。

「あれ、エイラ。目の色が、少し変わってない……?」

 彼女の眼の色は、髪より少し濃い桃色のはずだ。今はそれより、もっと赤い……ような。