「同騎士団副団長キース・エイダンと申します。よろしくお願いしますね、セシリー嬢」
「よ、よろしくお願いします……」
 
 セシリーはリュアンと握手を交わすと、同様にキースに手を差し出したのだが……彼はそれを握ると腰をかがめて青髪をさらさら流し、手の甲に微かに唇を触れさせる。背景に蒼薔薇でも幻視できそうなその流麗な仕草に、思わずセシリーは見惚れてしまった。

「いい加減にしろ、キース。しかし、てっきり危険な目に遭ったせいで部屋に閉じこもってもおかしくはないとお見舞に伺ったのだが、そんな心配は無用だったようでなによりだな」

 リュアンはそんな青髪の騎士の(すね)を蹴りつつ、セシリーに真面目くさった顔を向けたが、またも彼の言葉は胸をチクリと突くもので……セシリーにはまるで、「(さら)われかけた直後にまた能天気に外に出るなど、この娘の図太さは折り紙付きだな」などと言われたように聞こえてしまう。