「……はい! こちらこそ」
「……よし。少し待ってくれ」

 リュアンは立ち上がると、オルゴールを手に取りしばらく魔力を込めた。箱の中央に飾られた魔石が輝き、側面の突起が押されると……独特の、心に深く染み入るような、それでいてくっきりと弾むような音色が、日が翳り少し暗くなり始めた店内に流れ始める。

 そして壇上で、再び左手を差し出しながらリュアンは口を濁す。

「あ~……女性にこんなこと聞くのもどうかと思うが、お前……ダンスの経験って、あるのか?」
「エイラとならありますけど」
「そっか……それじゃお前が引っ張ってくれ。俺は実は王宮じゃ本ばかり読んでて、人と踊るのは初めてだしな」
「それじゃほら、左手はもうちょっと上に上げて、右手は私の腰の上に回して……。それじゃ遠いですよ。もうちょっとしっかり寄って下さい」
「こ……こうか?」

 恥ずかしそうに顔を背けるリュアン。大分積極的にはなったと思ったが、引っ込み思案なのは相変わらずなのだ。セシリーはぼそっと言う。