「話の途中でごめんなさい。この子がどうしてもセシリーに会いたいって」
「えっ?」
「セシリー……」

 その小さなかすれ声には聞き覚えがあり、ロージーの背中から飛び出した影がセシリーに勢いよく飛びついてくる。

「セシリーっ……うわぁぁぁぁん! 助けてよぉ!」
「ティシエルっ!?」

 ティシエル・リドール――黄緑色のくせっ毛にトレードマークのベレー帽と黒縁の丸眼鏡他、少々野暮ったい格好をした女の子は、セシリーに縋りつくと大声で泣きじゃくった。

 いきなりのことで事情もわからず困惑し、とりあえずセシリーは彼女をソファへと座らせて宥める。

「いったいどうしたっていうのよ……ほら、泣いてばっかりじゃわからないでしょ? ゆっくりでいいからちゃんと話して」
「う、うん……。すぅ……はぁ……。あのね、ティチ、工房でしばらくお仕事してた後、久しぶりにお家に帰ったんだけど」