隙間からちらりと見えるのは、徒党を組んだ男たちが壁に石や残飯をぶつけ、罵声を浴びせかけている姿。それを周りの住人たちが、迷惑そうな顔で見つめていた。

 セシリーはなんとか体を捩じ込んで人混みを抜け出ると、男たちと対峙する。

「あんたたち、なにやってんのよ!」
「なんだ小娘、邪魔すんじゃねえ。俺たちぁこの商会にゴミみてえな商品売りつけられて迷惑したんでなぁ。やり返してやってるだけさ」
「そうである……これは正当な報復である。他にも多くの民衆が被害を被っておるのだ。こんな商会は我らの街から追い出さねばならぬのである」

 後ろから出てきた特徴的な口調の男は、趣味の悪い着飾り方や仕草などからもどこかの下級貴族ではないかと察せられたが、セシリーは臆さず言い返す。

「何の証拠があってそんなことを言うのよ! うちの商会は安心安全を売りにしてるの! ちゃんと信用のおける供給元からしか仕入れないし、店に出す物はお金を掛けて専門の魔法使いに浄化、除毒までしてもらってるんだからね! そんなに多くの不良品なんて出るわけない! 証拠を見せなさいよ!」