それを見てどう解釈したのかオーギュストが笑みを深め、にこやかにキースが返答する。

「ええ……そうなんです。彼は実力もさることながら、人品卑しからぬ上に誠に支えがいのある気持ちのいい青年でして。手前味噌ですが、私も副団長に抜擢されたことを大変光栄に思っているのですよ」
(嘘付け。俺を弄って遊ぶことしか考えていないくせに)

 リュアンはキースのおべっかに背中がざわついたが、オーギュストが感心したかのようにうんうん頷くので、何も言えない。

「でしょうな。将来有望な上司を(いただ)くことは、大きなやりがいを感じられるものです。私も若い頃はねえ……」
「いやあ、オーギュスト氏が話の分かる御仁(ごじん)でよかった。今後とも我らが魔法騎士団と、よいお付き合いをぜひともよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」

 固く握手を交わした、腹の内が読めないふたりの会話と室内に控えた侍女たちの視線に、リュアンの苛立ちは募るばかりだ。