そして彼の隣では……。

「やあ、美味しいお茶をありがとうございます。茶葉の質もさることながら、さすが伯爵家で勤める方は立派な腕前をしていますね。私、ファーリスデル王国魔法騎士団副団長のキース・エイダンと申します。もしよろしければお名前をお聞きしても?」
(馬鹿キースめ……)

 副団長が女を口説いている。
 若い侍女が頬を染めてしどろもどろになっていたので、リュアンは彼に肘打ちをくれて隣からたしなめた。

(お前、なにしに来たと思ってる)
(いいじゃないですか。女性と見れば口説くのはこの世に生まれた男の務めでしょう? もっとあなたも女性との接し方を覚えた方がいい。人生、楽しくなりますよ?)
(大きなお世話だ……!)
「おふたりはずいぶん仲がよろしいのですな。まだお若いながら団長殿と副団長殿であらせられるとは、さぞかし腕が立つことでしょう」