冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 俯き加減のラケルは、どうも浮かない表情で微笑む。思えば最後にガレイタムで会った時もそんな様子だった。気には掛かるが、皆の前では問い正してもかえって話しづらいだろうと、セシリーは感謝を伝えるにとどめておく。

「向こうまで探しに来てくれてありがとう。今日からまたよろしくね! これからキースさんにお茶を淹れていただくんだけど、一緒にどう?」
「あぁ……ごめん、僕ちょっと調子悪くて。午後から任務もあるし、少し部屋で休むよ」
「えっ、だ、大丈夫? 熱とかあるの?」

 額に添えようとした手はやんわりとどけられ、彼は力ない笑みを浮かべた。

「いいから。大丈夫……またね」
「う、うん。また後で」

 そのまま奥へと歩いてゆくラケルを見送っていると、ロージーが隣から囁いた。

「なんか帰って来てから元気なくてさ……。向こうでなにかあったりしてない?」
「う~ん……あまり思い当たることは無いんですけど」