冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「あっ、それならこれ、色々とお土産を買って来たんです! ガレイタム産のお茶もあるんですよ」
「それは有難いですね。ん……ま、まさか、これはっ!」

 キースが驚愕の表情で手にしたのは、レミュールに貰った、離宮でも使われていた茶葉だ。

「ガレイタム王国北部の峻厳なロティーガル山脈の一部でしか取れないという、《ロティーガルズ・プラチナム》……!? しかもこのセカンドフラッシュは限られた数しか売りに出されない限定生産品ッ! まさしく、至高の一品なのですよ! 早速楽しみましょう、是非! 今!」
「紅茶バカ……べ~っだ」

 キースは彼らしくないご機嫌さで「素晴らしい!」と連呼しながら足早に執務室へと向かってゆき、お返しとばかりにロージーが舌を出す。

 はしゃぐ後ろ姿に顔を見合わせて笑ったセシリーたちが後に続こうとした時……静かに入り口扉を開けて誰かが入ってきた。よく見知った彼の顔は、別人のように落ち込んで見えた。

「あっ……ラケル」
「……セシリー? 帰って来たんだね」