冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「ほう、素晴らしいですね。こんなに早く魔法を体得できるとは」
「とはいってもこれ、ラナって人からの借り物なんです。彼女がきっとこれからみんなを守るために必要になるからって残してくれたんだと思うと……あんまり軽々しく使うのもどうかなって」

 目の前に軽い足音を響かせて舞い降りたセシリーの迷いを聞き、キースは少し考えた後こう言う。

「そのラナという方がどんな人物で、あなたになにを思って力を預けたのかはわかりませんが……彼女もきっとあなたのことを信じてそれを与えた。ならば恐れず、心のままにそれを振るえばいいのですよ。あなたがそれを間違ったことに使わないだろうということは、ここにいる私たちが保証します。ね、ロージー?」
「もちろん! セシリーなら変なことには使わないわよ」
「恐れずに……。うん、ちゃんと使いこなせるようにこれからも努力します。ふたりとも、ありがとう……」

 彼らの言葉にセシリーは感謝するとともに、これからも研鑽を怠らないことを約束する。知識や記憶を得ることはできても、実際に使ってみないと分からない部分も多い。まだまだ手足のように扱うには時間が掛かりそうだ。

「それがいいでしょう。さあ、こんなところで立ち話もなんです……我らが執務室でお茶でも頂きましょうか。久しぶりに腕を振るわせていただきますよ」