冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 少し離れたところで所在なさそうに立っていた彼は、そこでようやく歩み寄り、きまずそうに弱々しい笑みを浮かべた。

「そうですね……。僕たちも僕たちの仕事があるから、早く帰らないと。……でもセシリー、本当に無事でいてくれてよかった」
「ラケルも来てくれてありがとう。助けに来てくれて心強かったわ……無理させてごめんね?」
「ううん……。来ただけで、何の役にも立てなくて……こちらこそごめん」
「そんなことないよ……大丈夫? 忙しくさせたから、疲れたんじゃない?」

 沈んだ顔のラケルに近寄づこうとしたセシリーだったが、彼は一転して表情を明るくさせると、その肩をやんわり押し退けた。

「なんでもない。キース先輩にも迷惑かけてるし、僕だけでも早く帰らないとね……。すみません、先にファーリスデルへ帰ってます! 団長、セシリーをよろしく!」

 それだけ言うとラケルは素早く身を翻し、お茶を用意して来たマーシャに丁寧に断りをいれて建物から出ていった。それを心配そうに見送りながら、セシリーは呟く。