(ありがとう、ラナさん……)

 彼女が旅立つときに、短い人生で得た自らの知識と経験を自分の中に注ぎ込んでくれたことを感じ、セシリーは胸を手で押さえ、しばらく感謝の祈りを捧げた。

 それが終わった時、ノックの音がしてセシリーが扉を開けようとベッドから出ると、レミュールとマーシャが姿を覗かせた。

「……ラナ!?」

 瞳に変化に気づいたのだろうか。マーシャが肩を掴んできたが、セシリーは首を振った。

「いいえ……ごめんなさい。私はセシリーです。ラナさんはもう……」
「……当たり前じゃない。……ほら、マーシャ」
「うぅ、ごめんなさい。あたし……わかってたのに」

 マーシャを優しく下がらせ、レミュールは彼女と並ぶと、セシリーに頭を下げる。