セシリーが天蓋付きのとんでもなく広いベッドで目覚めた時、もう二週間近く前とは違ってここはどこだろうとはさすがに思わなかった。間違いなく、離宮にある自分の私室だ。

「う~ん……よく寝た」

 すっきりした目醒めの元、セシリーはこのところ夜ごと眺めていた、肌身離さず身に付けていた手鏡で自分の顔を映す。そこにはいつもと同じさして見栄えのしない顔があるはずだったのだが……。

「あっ……」

 変化に気づけたのは、いつも見慣れた自分の顔だったからだろうか?
 見た目には分かりづらいが……セシリーの瞳はレミュールやマーシャと同じか、それ以上に彩度の強い銀色に変化していた。

「そっかぁ……そうだった」

 それを見て、セシリーはすぐに気づく。あの子の……ラナの贈り物なのだと。