冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 そんな中、マーシャは瞳から大粒の涙をこぼし、顔を覆ってラナに謝罪する。

「お願い、死なせて! あたしが……あなたを創立祭の日、刺して殺したの! 謝って許されることじゃない!」

 地面に蹲る彼女の背中を撫でながら、ラナはジェラルドを見つめた。彼は座り込んだまま項垂れている。

「ゼル様……」
「ああ……それは事実だ。しかし……それは彼女の意思ではない。彼女には禁忌とされた、精神に干渉し憎しみや嫉妬の感情を増幅させて殺意へと仕向けるような非道な魔法が掛けられていた。赤い霧――あの場にいた護衛の宮廷魔術師ですら太刀打ちできぬほどの魔法を彼女が扱えたのも、ごく短い時間ではあるが何者かが彼女の体を乗っ取って利用したせいだ。悪いのは、マーシャではない」

 ジェラルドはゆっくりと立ち上がり、背中を震わせているマーシャの隣に跪く。

「ラナ……すまない。そうさせたのは、王国とオレの自身の短慮のせいだ。国の平和のためとはいえ、若い娘を集め、王族との婚姻という餌で煽り、競争心を掻き立て……挙句の果てにあんな事態になる原因を作ってしまった、オレの罪だ」