冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「久しぶりだね、レイ……」

 セシリーであるはずの少女が、儚い笑みをリュアンに向け、頬を撫でる。今彼女の瞳は……柔らかい銀色に光っている。そう……かってこの国で生きていた、ある少女のように。

「……ラ……ナ?」

 リュアンの手から剣が滑り落ちる。
 その言葉に頷き彼女は振り向くと……今のやりとりを弟とよく似た表情で訝しんでいたジェラルドに声を掛けた。

「ゼル様も……お兄さんでしょう!? あんなにリュアンを可愛がっていたのに……たったひとりの弟の無茶を止めてあげられないなんて、兄失格ですよ!」
「……な! ……ん……だと? セシリー……」

 強くジェラルドを見下ろすその顔はセシリーのものに違いない。しかしその表情が、彼昔見ていた懐かしいものへと重なったのか、ジェラルドもまた、剣を落とし呻いた。