冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「ぐっ……!」「なっ!?」

 ジェラルドとリュアンの態勢が大きく崩れ、途中で攻撃を強引に止めようとして体勢を崩し倒れ込む。しかし、それでも剣を向け合おうとするふたりを、セシリーとマーシャは身を挺して押さえ込んだ。

 リュアンはセシリーの顔も見ずに、ジェラルドの方を向いたまま怒鳴りつける。

「止めろ、邪魔をするな!」
「――ふざけないでよ!」

 そこで、パシッと乾いた音がリュアンの頬を打った。セシリーが両手で彼の顔を掴み、叫ぶ。

「こんな兄弟喧嘩女の子の前でする方が悪いんでしょ、バカレイ――!!」
「――っ!? ……い、今……。今……なんて」

 リュアンは何度も目を瞬かせ、俯くと首を左右に振り、もう一度頭を上げて目を見開くと声を震わせた。信じられない――という顔だ。それもそのはず……彼をこんな風に呼んでいたのは、かつて、ひとりの女性しかいなかったのだから。