ファーリスデル王国の王太子……その貫禄ある姿に衝撃を受けたのも間違いはない。しかし、それよりももっと強力にセシリーの注意を惹きつけたのは、別の人物たちの存在。そしてジェラルドすら、その内のひとりに強い視線を向け……レオリンに問いただした。

「少しお待ちいただきたい……。なぜ、その者をこの場所に連れて来たのです? レオリン殿」

 なにしろ、その後ろからは……こちらを安心させる様に微笑んだ赤い髪の新米騎士団員、そして。

「いやあ、私たっての希望で護衛として同行をお願いしたのです。我が国が誇る魔法騎士団所属の彼らならば、きっとこの身を預けるに足ると思いましてね。そうですね、リュアン団長」
「ハッ!」

 鋭い紫色の眼光を輝かせる、美貌の騎士団長が、こちらを見ていた。