「すみませんでした……僕は考えなしに団長の辛い記憶を探ろうと……」
「なるほど……あなたが聖女を探していたというのは、そのためだったのですか。ということは、いつかこの国へ帰ってこようと思っていたのかね?」
「いいえ……せめてもの罪滅ぼしのつもりでした。ガレイタムの現状はキースの話や流れてくる噂から知ったんです。亡くなったラナもこの国を大事に思っていましたから……もし聖女を見つけたら、送り届けてすぐにこちらに戻るつもりだった」

 首を振ったリュアンがオーギュストの反応を待っていると、やがて彼は机の上に向けていた視線をリュアンへと強く合わせた。

「……あなたが大切な人を失い、打ちひしがれたことは大いに共感しました。私も妻を亡くした時、同じような気持ちを味わいましたからね。しかし……娘はそのラナという人の代わりではないのですよ、リュアン殿?」
「それは……今は、充分にわかっているつもりです」
「ならあなたは何故ここに? もしあなたが彼女を月の聖女として認識しているだけならば、わざわざこんなところまで追って来る必要はなかった……。そのまま娘の身柄をジェラルド様に預け、月の聖女として選ばれるのを黙って見ているだけでよかったはずだ。今更ながらに悔みますよ……あなた方の元へ娘を送り出してしまったこと、そして妻に一目会わせたいがために娘を連れてこの国に戻った自分の浅はかさを」