「……ラナ?」

 俺は優しく彼女を揺する。いつのまにか瞼の落ちた瞳からは光が消え、背中から指先がするりと離れて地面を叩いた。……息が、途絶えていた。

「ラナ……」

 跪いた俺の体を誰かが押し退け、彼女をどこかへと連れて行く。
 立ち上がり、血濡れた手を延ばそうとしたが体に力が入らず……再び膝を突いた。

 俺はそのまま血が染み込んだ地面にうずくまる。
 声も出ない……だが、涙だけは止めどなく溢れた。それまで心を満たしていた温かい記憶たちを、全て胸の中から絞り出してしまうかのように。

 そうして……空っぽになった胸を抱えた時、どれだけ多くのものを彼女から与えられていたのかを……彼女を愛していたことを、やっと知った。