ゆっくり閉じられてゆく彼女の瞼が怖くて、俺は必死にその体を抱き締めた。けれど、ラナはもう痛みすら感じていないかのように笑ったままだ。手を尽くしたのか、その頃には周りももう、逝こうとする彼女を静かに見守っていた。
 
『そうしててね……。あぁ、昔芝生でくっついて眠った時みたいに、あったかい。レイ……最後に私ひとつだけ……我儘言ってもいい、かな』

 本当は聞きたくなかった。けれど……彼女の最後の言葉を聞く役目は、誰にも譲りたくない。

『嫌だけど……聞いてる。どんな小さな声でもいいから、話して』
『うん……。私ね、やっぱりもう一度、この世界に生まれたい。辛いことや、悲しいこともあるけれど、やっぱり、ここに居る皆のことが大好きだから。何度でも、会いたい』
『ああ……きっといつか、帰ってこれる。俺はずっと待つよ、ラナがまた会いに来てくれるのを……。いつまでも、どんな姿でもずっと待ってる。だから絶対に……』

 ラナは嬉しそうに笑った。
 何かを言おうとしたのか、唇が震えた後、ふっと体の力が抜けた。