冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「はぁ、はぁ、ありがとう! 教えてくれて助かりました。こらリルルっ、本当勘弁してよ? お前がいなくなって怒られるのは僕なんだから!」
「ガウゥ……!」
「何だよっ!」

 犬と威嚇(いかく)し合う男の子にセシリーはどこかで見覚えがあった。それが昨日ちらっとみた騎士二人組のかたわれだとすぐに思い出し、セシリーは両手を打ち鳴らす。

「あっ、あなたこないだの?」
「……あっ! 団長が昨日助けた人ですよね、どうも!」

 すると彼も気がついたか、額に手をかざして敬礼し、挨拶してくれた。まだ若く、年齢は多分セシリーと同じか少し下か。昨日の騎士団長こともあり、彼らには少し警戒していたのだが、その屈託のない表情には思わず毒気を抜かれてしまう。

「あっ、もしかして手当てしてくれたんですか? こいつ変なところばっかり通ろうとする癖があって怪我ばっかりするんですよ。ありがとうございます!」