「へえ~……」
「校内は、王宮からの支援で生徒ならだれでも自由に暮らせる寮もあるし、食事なども無料で行える場所が解放されている。内部では様々な研究が行われていて、近年では人工で魔石を作りだす技術も開発されたと聞いているよ」
「すごいですね……見てみたいな。でも、どうしてそんなによく知ってるんです?」

 リュアンはそれに聞こえない振りをして、町の中央へと向かってゆく。

(団長は……もしかしてこの国の人だったんじゃないか? もしくは……長くこの国で暮らしてたことがあるか……) 

 ラケルは大きな疑惑を抱えていた。数日前、フィエル村にたどり着いたふたりがオーギュストとセシリーの背格好を詳しく説明して尋ねた時、村人は彼らなら王国軍の兵士たちが拘束し、馬車で連れて行ったと教えてくれた。その中にはかなり身分の高い、黒髪黒目の男性がいたことも。

 それを聞いてもリュアンはなんの驚きも見せず、国内を迷いもせず最短の道筋を通って、ラケルをともないここまでやって来た。

 そして今リュアンは今フード付きの外套で顔を隠し、目立つ紫の瞳を本来のものと違って見せる魔法まで使っている。こんなことをするのは万一にもここに居ると、知られてはならない事情があるからでは……。