差し出された王太子の手にキースが快く握手で応じると、彼は顔を引き締める。

「先日連絡をくれた件に関して……私も噂を伝え聞いた。ガレイタムの方でも月の聖女がついに見出されたのだと。恐らくこの情勢下ではガレイタム王家も、数週間の内に国中にその存在を触れ回ることとなろう」
「やはりそうですか……」

 考え込むキースの後ろを見て、王太子は人の悪い笑みを浮かべる。

「おや、今日はヴェルナー家の次男坊はいないのかな?」
「……彼は、今任務の途中でありまして」

 わずかな一瞬口ごもったキースを見て、王太子は優しく肩を叩いた。

「キース、一人で抱え込むのは君のよくない癖だぞ。少なくとも、私はリュアン殿についての事情も把握しているんだ。君たちの不利になるような真似はすまいよ……もし相談できるようなことがあるなら遠慮なく話してくれたまえ」
「殿下……」