冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 どこかぼんやりとした気分でいる中、ゆっくりと動き出した大狼の背中にセシリーが慌てて掴まりなおすと、彼女は巨木の側面に空いたうろの前に連れてゆかれる。

 ……あの後、女神には国を救うために為さなければならないことを教わった。封印が破られた後、直接それを浄化するための大きな危険を伴う役割。そして――。

「あっ……これが、女神さまの言っていた今作ってるっていう、月の光を浴びた石の代わりかな?」

 それに必要なものがあると女神に言われた通り、薄暗い穴の中を探してみると、奥には乳白色の丸い宝玉が置かれていた。背の低い天井だと思っていたものはどうやら敷き詰められた草花のようだ。植物の中には時間帯によって開いたり萎んだりするものもあるから、月光だけがその場所に届くよううまく調節されているのかもしれない。

 セシリーは少し疲れた顔で……彼女の指示通り、おそるおそるそれを持っていたハンカチで包むと抱え、うろの中を出る。すると、そこに寝そべって待っていた大狼から声が届いたのでびっくりした。

(月の女神とあなたに繋がりができたことで……眷属たる私たちも声を届けることができるようになりました。セシリーと言いましたね)