冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「我々の力だけでは足りず、前回の封印には核となる物質を必要としました。長きに渡り月と太陽、それぞれの光だけを浴びながら成長した石。しかしあれほどの力を持つ物は、この広き世界たりしといえど、ふたつと見つけられなかった。それは今も、各々の時計塔にて封印を維持するために働いていますが、一度それが破られれば反動で粉々に砕け散ってしまうでしょう」

 月の女神はこの時のため、眷属たちに協力を仰ぎ、色々な場所にて代替品を作ろうと試みたようだが、未だ十分な力を持つ物は生み出されていないとのことだった。

「せめて後二百年……いえ、百年あれば同等の封印を施すに足る力を得られたでしょうが……」
「それじゃあ……もう私たちにできることはないんですか……?」 
「いいえ。あなたをここに呼んだのは、ただ絶望させるためではない。ひとつだけ……方法があります――」

 嘆くセシリーに、月の女神は弱々しく瞬いた……。




 ――掌が、ひんやりと堅い木の幹に振れている。風がさっと髪を揺らし、いつの間にか、セシリーは自分の体の間隔を取り戻していたことに気づいた。