冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「ともかくですが……ふたりの聖女の力をもってしても、暗黒を消し去るのは困難でした。かと言って、聖女に力を与え過ぎれば……奴と同様の事態を引き起こす可能性すらある。やむなく我らは奴を封印するに留め、力の回復を待って再び暗黒を滅する機会を窺っていたというわけです。ですが……」

 言葉を濁すように少し間を開けた後、女神は思いもよらぬ事情を明かした。

「しかし想定外だったのは我らの影響を受け、そちらの世界でも特別な力を操ることのできる者たちが生まれ始めてしまったことです。そう……お前たちが魔力と呼ぶものは、その出来事で初めてお前たちに認知され、以後急速に広がっていった。結晶化した魔力の塊が現れ始めたのもその頃からのはずです」
「その話、どこかで……あっ!」

 ひとつ腑に落ちることがあった。友人である魔道具作成師・ティシエルの話だ。

 ある日楽しそうに彼女は言った……。成長速度から見て、魔石が発生し始めたのは四百五十年ほど昔で、まるで何者かが大地に慌てて埋め込んだようだと。同時に魔道具も生まれ、歴史的に大きな変革であったはずのに、鍵となる出来事がまるで見つかっていないのが不審だと。そんな彼女の言葉をただただ面白い意見だと聞き流していたが、あれは意図せず真実をかすめていたらしい。