冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「そのぅ……それじゃもしかして、今やってることって、そちら様の内輪揉めみたいな話なんですか……?」
「ある意味ではそうです」

 素直に肯定されてしまい、がくりと項垂れるセシリー……それなら尚のこと彼らにどうにかして欲しいところではあるが……。

「奴は……そうですね。便宜的に、『暗黒(やみ)』とでも呼ぶことにしましょうか。暗黒は、あなたたちの世界に非常に強い興味を持っていた。そう、我々の世界は常に孤独で平等、平穏な世界ですが、そちら側に触れるにつれ徐々に、奴はこの場所がつまらなく感じ始めたのでしょう。一つの禁忌を犯してまで、そちら側に自分の移し身を顕そうとした」
「ど、どうやって?」
「我々は、その者がよほど強く望まなければ、自我のあるものに乗り移ることは叶いません。だか暗黒は、どうしてもそちらの世界で動ける自分の身体が欲しかった。そこでまず私のようにひとつの依り代を作り、近くにいた生き物に長い時間を掛けて力を与えることで眷属として……それを操作し、ある人間が自分の力を求めるよう誘惑させました」
「それが……」
「そう。それに選ばれたのが、両国の間にかつて存在したという小国の王、リズバーンとかいう男でした。暗黒が彼の身体で何を行うつもりだったのかはわからない。しかし、想像以上にリズバーンとやらは強い自我を持っていたのか、暗黒とは精神が完全には混ざりきらず、反発し喰らい合った末に崩壊した。だが、驚くことにリズバーンの精神のわずかな一部だけがそれを免れ、剥き出しの欲望によって突き動かされる化け物が誕生してしまったのです……」