冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

「あれが私の、あちらの世界での依り代です。お前たちは何やら月の女神などと呼んでいるようですが」
「はぁ……そうなんですか……えっ、女神様!?」

 どこか夢心地のセシリーはその光に手を伸ばそうとした。しかし、伸ばしても伸ばしても一向にその距離は縮まる気配がない。

「無駄です。この世界では、互いがそれぞれ独立した存在として……決して触れ合うことは叶いません。だから私たちはお前たちの住む世界へ興味を持ち、時折降るようになった……」
「あなたたちは、一体何なんですか? いわゆる……幽霊みたいなものなんでしょうか?」
「それは、私たちにも分かりません。我々の言葉では自分たちのことを『■■■』と言っていますが」
「えっ……びゅびばぼぼる……なんて言ったの?」
「ですから、『■■■』です」
「ばびゅるぼぼべす……?」

 その発音はまったく聞き取れないというか、頭が理解することを拒否しているような感じだった。例えば、津波や嵐がなど自然が発生させるような音を無理やり言語化したような……。