しゅっしゅっと素早く両手を交差してみせるリュアンを、赤髪の騎士はきらきらした尊敬のまなざしで見つめた。

「うわぁ、さすが団長。また今度僕にも指南してもらえますか!?」
「いや、この秘伝のこの技術はまだお前には早すぎる。お前がもし副団長になった暁に、伝授することとしよう」
「楽しみにします! あれ、キース先輩どうしました?」
「いやいや……相変わらずだなと思ってね」

 キースは顔を見られないよう、壁に手を突いて背中を震わせている。

 自分はともかくとして、純粋で人懐こい若手ホープや、他にも気のいい仲間たちがいるこの職場でのやりとりを、キースはどこか娯楽のように楽しんでいるふしがある。しかしそんなもの、日々おちょくられているリュアンからすればたまったものではない。

(こいつ、今に見てろよ……)

 キースにこういった部分があるとは、出会った頃には思いもよらなかった。彼の実力は認めざるを得ないが、リュアンにだって意地がある。数年前と関係性が変わった今、いつまでもこのままにはしておかない。

 リュアンは彼にぶすくれた視線を向けると、いつか実力でひれ伏させてやると固く誓うのだった。