再び魔力を形にし、今度は床に雑巾を貼り付かせて、部屋の出口から通路に向かって走り出したセシリーだったが、今度は水に濡れた床に足を滑らせて前のめりにすっ転ぶ。

「きゃぁぁっ!」
「――危ないっ!」

 あわや地面に頭突きというすんでのところで抱え上げたのは、この離宮の主、ジェラルドだった。

「ふう……何をやっている馬鹿者め。今の勢いで突っ込んでいたら洒落にならぬぞ。元々高く無い鼻がさらに引っ込むところだったではないか、セシリー」
「あ、ありがとうございます……」
「お前は軽いなぁ。女らしくなるには、もっと食わぬとな」

 彼はセシリーの体をぐっと持ち上げると、両足から地面に下ろしニッと太い笑みを浮かべた。その言い方に、なんとなく素直に感謝する気持ちになれないセシリーの頭をジェラルドはまた掻き回す。

「……止めてくださいよ」