マーシャはそんな彼女の顔を優しくタオルで拭ってくれ、レミュールはおかしそうにくすくすと笑う。

「困った聖女様ねぇ……。でもそれだけ魔力があるのに、魔法が使えないだなんて……ファーリスデルでもちゃんと魔法の素養のある人間は民間からも拾い上げてるでしょう?」
「実は……私、自分に魔力があるって知ったの、最近でして……」

 後ろ手で頭を掻くセシリーにふたりはさもありなんと頷く。

「ふ~ん、なるほど。道理であなた、魔法使いっぽくない目をしてるものね」
「黒味の強い灰色ですもんね。でも多分、しばらくしたら私たちと同じように変わって来ると思いますよ」
「ほ、本当ですか!?」

 マーシャが顔を寄せ、自分の顔とセシリーの顔を並んで映す。もしかして、自分も将来彼女たちや母のような、銀に近い灰色の瞳になるのだろうか……そんな事を思うと少し嬉しくなった。

「わ、私頑張ります! 絞れないけど、拭くくらいならっ! ……うわわわわっ!」