なるべく王妃としてふさわしくない振る舞いを示しつつ、月の聖女として大災厄の復活は阻止し、事が済んだ後にガレイタム王国からの脱出を図るのだ。

 果たしてそれが可能なのかどうか考えるよりも、今は周りから情報を得るべきだとセシリーは気持ちを切り替えた。騎士団の皆と約束した、彼らの元へ戻るという言葉を嘘にしないためにも。

「レミュールさん、マーシャさん、わたし頑張ります! ですからこの国の色んなこと、ぜひ教えてください!」
「それじゃあまずこの建物を案内しますね! ここにはあまり侍女たちも来ないので、色々なことをセシリーさんにもやってもらいますけど、大丈夫ですか?」
「はいっ!」
「なんだか急に調子よくなったわね。なにか別のことを企んでないかしら……?」

 空元気を出すべく大きな声で返事し、手招きするマーシャに続くセシリーをレミュールは不審そうに見つめたが、無闇に疑うのも面倒に思えたのかそのままふたりの後を追う。

 こうして予期せぬセシリーの離宮での生活は幕を開けた。