「ハッ……!」

 ジェラルドが即座に跪き、国王に頭を垂れたが、セシリーはぽかんと口に開けるばかりで彼に続くことはできなかった。感動から切り替わった意識が、自動的に国王の言葉の意味を反芻(はんすう)する。

 婚約を結び、共に繁栄に尽くす……それは、すなわち。

(ジェラルド様と結婚。それって、王妃になれってこと、ですか? あら~……)
 
 恐ろしい現実を認識した瞬間、セシリーの体は鏡を両手で固く握ったままゆっくり傾き、意識は遠いところへと旅立って行った。