冴えない令嬢の救国譚~婚約破棄されたのちに、聖女の血を継いでいることが判明いたしました~

 彼は真剣な声音で釘を刺す。

「いつまでも、私がこうやって面倒事をこなしてくれるとは思わないことですよ」
「それは、わかってるさ……」

 苦々しいことこの上ないが、こうしてキースが諭してくる時だけはしっかり聞き入れざるを得ない。

 今はこうして優秀な彼が支えてくれているから、若輩のリュアンでもどうにか団長を務められている。しかし、それではこうして自分がこの席に座っている意味がない。お膳立てを整えてくれた彼や、自分を信じて着いてきてくれている団員の期待に背くわけにはいかない。

 前向きに考えるべく、リュアンは無理やり重たい頭を働かせる。

「だがな。お前と違って俺は、知り合いの女性なんて受付のロージーくらいしかいないんだ。あいつに頼むのは無理だし、現地で声を掛けるなんてのも不誠実だろう?」

 そこでキースは我が意を得たり、というように眼鏡の奥の瞳を光らせた。