「……私もだ。本当はもっともっと、彼女を幸せにしてやりたかった。伝えるべき言葉が心の中にたくさんあったのに……本当にあっけなく、去ってしまった」

 オーギュストは顔をうつむけ、帽子を傾けようとするが、セシリーはその手をつかんで首を振った。

「もう、隠さなくていいから、ちゃんと悲しんであげて……。これからたくさん、お母様のこと、思い出して泣いてあげて」
「……サラ」

 オーギュストは口を押さえ、苦しそうに大粒の涙を流す。

 ……そうして親子ふたりは、しばらくサラを(いた)んだ。
 包むような日差しも、柔らかく背中を撫でる風も、優しく慰めるように彼らを労わった。