一方、そんなキースをきつく睨みつけているのがセシリーを助けた例の黒髪の騎士団長、リュアン・ヴェルナーだ。

 ちなみに年齢はリュアンの方が低く、二十三とキースの二つ下なのに団長職に就いているのは事情がある。時々分不相応に感じるし、なにかとやりづらく思うことは多いのだが、自ら望んでこうしたのだから堂々とすべきなのだと彼は割り切っていた。

 奥の団長席に座り、湿布を張った頬を忌々(いまいま)しそうにさする年下の上司を、懲りずにキースは茶化してくる。

「それにしてもですよ。で、その頬は? 治さないのですか?」
「ふん、この程度でいちいち魔法を使っていられるか。魔力の無駄だ。後、問題にしたいのはそこじゃないって言っただろう。いい加減真面目に聞け」

 リュアンは机を指で叩きながら吐き捨てると、彼を紫の瞳で見据え、声を低くする。

「――見つけたかもしれん」

 その言葉に、キースは一転秀麗な眉をひそめる。