頬を赤くしてリュアンを睨むラケルにも元気よく抱き着くと、そこで十三時の鐘が鳴り、セシリーは体を離して目尻を拭った。

「もうこんな時間だし、戻らなきゃ。ふたりとも、本当にありがとう! 私また絶対、魔法騎士団に戻って来ますから、待っててくださいね! それじゃ……また!」
「ああ……楽しみにしてる」
「僕も! 気を付けてね!」

 満面の笑みで手を振り、戻って行くセシリーを見送った後、胸を押さえてため息を吐きながらラケルが言った。

「可愛いな……。なんか、出会った頃より綺麗になっちゃって、もう気軽に話せないや」
「ああ……本当にいい笑顔で笑うから、ずっと見守っていたくなる……」
「え……?」「ん……?」 

 ぼうっとしていたふたりが怪訝そうな顔を向け合うと、一瞬、目線の間で火花が散った。

「あの――」「お前――」

 しばし沈黙……その後。

「帰りますか……」「だな……」

 ふたりは未体験の感情に互いに追及を避けると、不自然さを誤魔化すなんともぎこちない表情をしたまま歩き出す。しかし、並んだ肩の隙間は、これまでよりも少しだけ距離が開いてしまっていた。