慌てて駆け寄った彼女に、羽根をゆらゆら開閉させる紙の蝶からはまた、耳に馴染んだ赤髪の騎士の声が届く。

『僕たち今、時計塔広場にいるんだ。窓の外からも多分、見えると思う』

 セシリーが身を乗り出すと、言った通り広場には目立つ赤髪の彼ともうひとり、黒髪の騎士団長リュアンの姿が見えた。

「わざわざ顔を見せに来てくれたの……!? お~い、お~い!」

 喜んだセシリーは遠くに見える彼らに大きく手を振る。するとラケルは飛び跳ねるように両手を振り回し、リュアンも軽くだが手を挙げてくれた。

 ほっとしたセシリーは再びテーブル席に戻ったが、その時にはもう、心なしか蝶の羽ばたきが弱々しくなっている。

『セシリー、ごめん。その魔法あんまり長く持たないんだ』
「そ、そうなの? ど、どうしよう……騎士団の方にいきなり行けなくなってごめんね? 色々話したいことはあるんだけど、どうしたらいいかな?」
『僕ら……お昼休憩の間……ここにい……から、出れ……らでいい……来て――』