にっちもさっちもいかないセシリーは、おもむろに立ち上がると窓を開けた。

「……町で何かやってないかな」

 爽やかな風と活気ある街並みが少し慰めになり、ぼんやりと肘をついて眼下の景色を見下ろすセシリーの頭上を、ふわりふわりとなにかが横切ってゆき、部屋の中へ入り込む。

「ん……、蝶……?」

 ひらひらと羽ばたくそれを目で追い、セシリーは驚いた。薄桃の羽をゆったりと動かすそれは、よくよく見るとなんと、紙でできているないか。

 しかも、おかしいのはそれだけではない。椅子の背に止まり小刻みに羽根を震わせる蝶からは、なんといきなり、知り合いの声が聞こえてきたのだ。

『……シリー? ……セシリー、聞こえる?』
「……ラケル!?」