セシリーの口から重たい溜め息が飛び出したのは、父に心配を掛け過ぎたのを自覚しているからだ。そして彼女がなぜもこう暇を持て余すことになったかというと、事件の後オーギュストから、ひとりでの外出、特に魔法騎士団へ出向くことを禁じられたせいであった。

 抗議はしたものの取りつくしまもなく、約束を破ればもう家から一歩たりとも出さないとまで言われてしまった。不満はある。しかし一人娘が誘拐に遭いぼろぼろの姿で帰ってきたのだから、当人としては父の不安を和らげるべく、しばらくは大人しくしておいてやるべきだろうとも思う。

 リュアンの退院まで、エイラの監視付ではあったけれどもお見舞だけは大目に見てくれたのがせめてもの救いだろうか。せっかく騎士団での激務が緩和されて喜んでいたロージーには申し訳のない気持ちでいっぱいだ……。

「困ったなぁ~……」

 やらなければならないことはある。あの時の異様な魔法のな力のことについてちゃんと知り……可能であればそれを制御できるようになること。それには魔法騎士団に戻るのが一番の早道だろう。魔法のエキスパートたる彼らなら、この力について何かわかるはず。