「あのさ……済まなかった、色々。それと……もし迷惑じゃなかったら、少し話を聞いてくれないか。俺がどうしてあの時、あんな態度を取ったのか。俺の、昔のこととか」

 そしてセシリーも、むくれた顔を元に戻すと穏やかに笑ってくれる。

「こちらこそごめんなさい。私だって、リュアン様があんな態度を取るなんて、何かあったんだって思わなきゃいけなかった……だからお相子です。でも、きっと今度はなにがあってもあなたのこと、信じられると思います」
「ああ、ありがとう……」

 真っ直ぐな信頼に照れつつも、リュアンは少しずつ確かめるように言葉を乗せ始める。

 セシリーと気の休まる一時を過ごしながらも、この先のこと――もしかするといつか、彼女を送り届けるために、共に祖国へと戻る未来が、ほんの少しだけ頭によぎった。

 ――しかし、彼の想像よりもずいぶん早くその時は訪れることになる。この日からわずか十日余りの後、リュアンは姿を消した彼女を追って旅立つことになるのだ。もうひとりの……月の聖女を擁するはずのあの隣国、ガレイタム王国へと。