「ふう、肩の凝る仕事が山のように待ち受けているので、私はこれで失礼しますよ。団長、今の内に精々休暇を満喫しておくことです。帰ってくる時はお覚悟を。ではセシリーさん、ごゆっくり」
「は、はぁ……」「帰るまで頼むぞ」

 速やかに退場したキースは見送ると、セシリーはこちらに向き直って手で顔を可愛らしくパタパタあおいでいる。リュアンはそんな仕草に頬を緩ませ、もう一度同じことを聞いた。

「それでその後どうしたんだ」
「い、言いません。自分で思い出して下さい!」
「わ、わかったよ……」

 セシリーは怒ったようにそっぽを向く。その剣幕にリュアンは強く出られず少しの間、無言の時が流れた……。

 リュアンはじっとセシリーの顔を見つめながら安堵する。大丈夫だ、もうあの人と顔は重なりそうにない。彼女のそんな表情を見ていると……不思議と今までずっと心の奥に感じていた重たさが和らいでいくような気さえした。

 リュアンはもう一度、彼女に深く許しを請う。