元気よく返事をしたセシリーは、自分の横髪を触って一度だけ振り返る。

 母の髪留めは壊れてしまい、今頃は瓦礫の下だろう。でも不思議と不安はない。代わりに今は、沢山の頼りになる仲間たちができたから。

(今までありがとう……。お母さん。私、頑張るからね!)

 手を上げて別れを告げ、リルルの滑らかな手触りの毛皮に体を預けるセシリーだったが、張り詰めていたものが途切れると訪れた心地よい眠りの誘惑に抗えず……いつのまにやらリルルの大きな背中ですやすやと寝息を立ててしまっていた。