得体の知れない大きなものが、体の内部から噴き出してくるように思え、セシリーはその場に膝を突く。水のようにうねる何かが、出口を求めるように爪先から頭までを荒れ狂いながらぐるぐる回る。その内、手を突いていた地面がびりびりと振動し、亀裂が走り出した。

(これが、もしかして魔力なの……!?)

 嵐に見舞われた小舟に乗るかのような感覚を味わいつつ、セシリーは必死に自分自身の心の制御を取り戻そうとする。しかし、その意思はあっという間に掻き消されそうになり、激しい怒りと拒絶の感情が形となったように、セシリーの周囲を破壊し出した。

 メキメキと牢屋の石壁に亀裂が入り、松明の灯が揺らぐ。

「チッ、ずらかるぞ! ここにいちゃあ不味い……」
「ま、待って下せえ頭!」「ば、化け物……ひぃ!」

 冷静な口調の中にも畏れを滲ませた頭目が真っ先に身を翻し、部下が次々とそれに続く。地面を激しい揺れが襲い、瓦礫が降り注いだ。